『ナイフの実用サイズについて』
               信太一高

 一本のナイフに万能性を求めがちである。
 手紙の開封、りんごの皮むきなどの日常的な作業から、アウトドアでの薪割りまで出来るナイフを求めがちである。
 だから最初は、大は小をかねて、大型ナイフを手に入れる傾向がある。
 たとえば、相田義人のブレード長が150ミリの『ウイルダネス』で封筒を切り開き、りんごの皮をむいても、まったく問題はない。もちろん直径5センチくらいの太さの木を切って薪にする頑丈さもある。
 しかし、ハンドル長を合わせると300ミリ近くの大型サイズの『ウイルダネス』を腰に吊るして一日いっぱい行動する体力があるだろうか? 
 また、場違いの場所で大型ナイフを腰に吊るしていると、周辺の人たちに余計な恐怖感や違和感を与える懸念がある。
 一本の大型ナイフで、インドアの細かい作業からアウトドアのパワフルな仕事までこなすことは技術的には素晴しいことである。しかし、あまり合理的とはいえない。
 ナイフの特徴は携帯できることである。必要以上に大型のナイフを持つことは、携帯性が損なわれてしまう。わたしの常用ナイフは、相田義人の『3インチセミスキナー』である。デスクでの鉛筆削りから釣魚の腹割き、キャンプでのクッキングまで使う。3インチセミスキナーは、3インチの実用的サイズと、緩やかなカーブエッヂと鋭いポイントを持ち合わせた優れたナイフモデルである。
 薪割りは3インチのサイズでは無理なので、手斧や鉈などを使う。
 アウトドアで使う道具は、安全性と携帯性に優れているものでなければならない。
 3インチセミスキナーは、安全性と携帯性に優れたアウトドアズマンナイフである。

[略歴]

信太一高 (しだいっこう)
日本写真家協会会員。那須写真美術館主幹。宇都宮デザイン電子専門学校(フォトデザイン)講師。
1946年 秋田県生れ。90年千葉市川市から那須町に転居。那須の風景を撮り続ける。個展は『三國連太郎の12年』『三國連太郎の14年』『那須の景色』など6回。 著書は『気分はアウトドアライフ』『ザ・ナイフ』『アウトドアズマンナイフのすべて』『水の四季』『ナイフは語る』『自然を遊びこなす33の方法』『アウトドアズマンナイフを使いこなす』『快適田舎暮らしのすすめ』『那須の四季』など10册。
http://www.nasu-web.or.jp/~shida